優先するべき予定を止めて、一部巷で話題の「太陽の下で」を観た。
この作品は世に知らしめる必要があると思った。
だから記事にする。
http://taiyouno-shitade.com/
この作品、当初は北朝鮮で暮らす少女ジンミちゃんの1年間を密着するドキュメンタリー、という企画内容だった。ところが取材には常に党の監視と演出が入ることから、その異常な実態をありのまま全世界に見せる内容に変更された、といういわくつきのもの。
対外的に流される映像のすべては当局の演出して創られたフェイクである。マスコミが「劇場国家」と形容しているが、この作品を見るとなるほどそのことが良く分かる。ただ、確かにその通りだとは思うけれども、日本とは違う変な国、ってところで終わている。それだけでは見方として浅さ過ぎると言わざるを得ない。
映像に映る演技指導される人たちの目。皆笑ってない。死んでいる。電車に乗って行き交う人々の表情もまた死んでいる。一生懸命笑顔を作って舞台で踊る人たちの目もやはり死んでいる。こういう死んだ表情・目から、市井の人々が党の思想・指導の通り生きることだけを望まれ強制されている、ということを嫌というほど理解させられる。これじゃあ何のために生きているのか分からない。文字通りの人造人間じゃないか。
思想教育の徹底ぶりもまた凄い。学校での授業内容は言うに及ばず(作品中では日本やアメリカが絶対悪でそれを将軍様が反撃して追い返すような内容だった)、建物の屋上や出入り口などに掲げられた看板には、どれも将軍様を賛美するもので統一されている。テレビやラジオで流される内容も同様だろう。
また作品中には妙にだだっ広い広場や、妙に立派な建物、将軍様の巨大な銅像?などが登場するのだが、それらのモノから受ける印象は、上っ面だけの虚栄心を具現化した卑しさの象徴としか感じられない。もちろん文明の豊かさや繁栄を象徴する芸術的な価値など感じられる筈もない。
作品の最後に主人公のジンミちゃんに当局の監視無しで問いかける場面がある。
インタビューアー「少年団に入団したけど自分の一生に何を期待する?」
と聞かれジンミちゃんは涙を流し始める。

その質問に動揺し、そして自分自身が主体的に何かを感じたり、表現して生きる事が許されないという虚しさ・哀しさを、弱冠8歳の子供ながらに感覚的に理解し、絶望したのだ。非情に賢い子である。
インタビューアー「何か好きなことは?」
ジンミちゃん「分からない・・・」
直観的に主体的に考えてはいけないと無意識的に処理し、思考する事をそこで停止してしまった。そして最後に「好きな詩は?」と問われて、将軍様を讃えるために暗記した一節を無表情に淀みなく唱える。
一言で表すなら「国家ぐるみのカルト宗教団体」。
それがこの北朝鮮という国。
国家全体で行う思想教育の恐ろしさ、そしてそこで自由を奪われ生きる人々の悲哀を感じた。作品終了後はだからと言って何かできるわけでもなく、やるせない気持ちから溜息が出るだけであった。
日本に生まれて本当に良かった。
札幌ではシアターキノにて3/10日まで上映されている。
興味ある方はご覧いただきたい。
http://www.theaterkino.net/


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